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経済産業省主催「オレンジイノベーション・プロジェクト」参画企業に選ばれました

 この度、株式会社さくらほりきりは、経済産業省が主催する「オレンジイノベーション・プロジェクト」の実践企業として採択されました。

オレンジイノベーション・プロジェクト
~認知症当事者とつくる、誰もが生きやすい社会~
認知症になってからも自分らしく暮らし続けられる「共生」社会の実現を目指し、認知症の人が主体的に企業や社会等と関わり、認知症当事者の真のニーズをとらえた製品・サービスの開発を行う「当事者参画型開発」の普及と、その持続的な仕組みの実現に向けた取組を推進するプロジェクトです。

オレンジイノベーション・プロジェクト

 当社は、「誰にでも簡単に作るよろこびを感じていただけるように」との考えでクラフトキットの開発を続けてきましたが、その作りやすさと完成度から、多くの福祉の現場でのレクリエーションや病院のリハビリ用としても取り入れられ、口コミという形でも大きく広がってきました。

 それらの実績もあり、より多くの認知症の方にも作るよろこびを提供していくべく、今回のプロジェクトに参画することとなりました。

 今後、認知症の方にも分かりやすく作れて、「作るよろこび」を感じていただけるように、実際にクラフトキットを体験する中でご意見を伺い、新たな気づきを得ていきたいと考えています。

 これまで、当社の全ての商品には、詳しい専用の説明書が付属しており、これを見れば、殆どの方が間違えずに、作り方を理解してきちんと完成させられるのではないかと考えていました。

 しかし昨年度、福岡市の「オレンジパートナーズ」の一環として、実際に認知症の方々に当社の「かんたん押絵」を製作していただいた際、我々も想定できていなかった発見がありました。
 「認知症」とひと言で言っても、実際の認知機能の低下は様々であり、その中でも色の区別がハッキリしていないと境目が分からないという問題があるという事でした。
 当社の押絵キットの台紙は、それぞれのパーツを必要な形に型抜きがしてあります。指で押して台紙から外してしまえれば、それぞれのパーツの形に分かれ、あとはそのパーツを布でくるんでいくだけという単純な工程です。

 ちなみに、他社さんでも押絵(くるみ絵)と呼ばれるキットもありますが、このように型抜きされていないものが多くあります。型代や型抜きをする手間や工賃が掛かってしまうからです。
 ただ我々としては、面倒だと感じる部分をなるべく減らし、楽しいと感じられる部分だけをお客さまにやってもらったうえで、完成度が高い作品にするべきだと考えており、この「型抜き」は創業時からの拘りとしてあらゆる商品で実施しています。

手で簡単に外せるよう型抜きされています

 この型抜きの台紙は白地で、文字のみを黒色で印刷している形状でした。この形状が、①指で押して外す場所の見分けがつかない、②文字が多すぎて混乱してしまうというご指摘をいただきました。そこで必要のない土台部分にグレーの色を付け、必要な部分のみを白にして色の違いをつけることを検討しました。何度か当事者の方や介護をされている方とやり取りをさせて頂き、既存の方法より分かりやすくなるだろうという返答を頂いて、順次、生産時の印刷データを変更しています。

色分けで使うパーツが明確になりました

 当社は「誰でも簡単に完成度の高い作品を作れるクラフトキット」を商品コンセプトに、クラフトキットを利用しながら「作るよろこびを通して、人々に喜びと感動を提供し、社会に貢献していく」という経営理念の下で企画開発に取り組んでいます。

 創業当時この「誰でも」というキーワードは、主に一般の主婦の方を想定していました。それが現在では、多くの高齢者施設や病院のリハビリなどでもご利用いただくようになり、「誰でも」の範囲は大きく広がったように感じていました。

 コロナ禍以前ですが、当社が開催していた展示即売講習会へ半身麻痺で車いすに乗った女性にご来場いただくことがありました。当時、作業療法士の皆さまにご意見を伺いながら開発した「シールちぎりあ~と」をお披露目していて、その女性も「私にできるかしら?」と片手で挑戦されました。
シールをちぎる必要があるので、本来は両手を使いますが、作業療法士が考案してくれた「机の端にシールを貼り、片手でちぎる」という方法で、工夫しながら社員も応援して無事に完成していただくことが出来ました。

シールをちぎっている実際の様子

 その女性は自分で完成させられたことの嬉しさで「私にも作れた」と、泣きながら喜ばれ、一緒にいた社員たちももらい泣きをしてしまったそうです。

 そのエピソードの報告を受け、実は、障害を持たれている方ほど、この「作るよろこび」を本当に求めているのかもしれない。確かに出来ないことも有るかもしれないけれど、だからこそ「作るよろこび」は、より大きな喜びに感じていただけるのだろうし、より必要とされ、求められているのではないだろうかと考えるようになりました。

 作業療法の現場でも、自分で作れたという達成感を積み重ね、自信を持ってもらえることが大事だと聞いています。同じ作るよろこびでも、手先の器用な方が作れた喜びと、不器用な方の感じる喜びには違いがあるだろうし、ましてや、精神的、身体的な障害を持たれている方が感じられる喜びは、より大きな喜びと自信に繋がっていくのではないかと思います。

 そう考えた時、「誰でも簡単に完成度の高い作品を作れるクラフトキット」を必要とされる人を、より広く捉え、それを実現させる努力を更にしていきたいと思いました。これまでも子どもから高齢者まで、老若男女問わず、とは考え幅広くご利用いただいてきました。
 それでもまだ難しい、出来ないと思われる方がいる。その方たちにも「簡単に完成度の高い作品を」と考えると、実際に作れるものが提供されているだろうか。その方たちにも、楽しみ生きがいとなるような商品をお届けしていきたい。
 当社のクラフトキットも、まだまだ改良してより多くの方に作るよろこびをお届けできるようになるにちがいないと考え、今回オレンジイノベーション・プロジェクトに参加し、当事者やその周りの方々から多くの学びを得て、商品の改良に取り組んでいきたいと思っています。